2026-4-5 sat-lai(テーマ)

つくりたいものの話

歌わなければいけない時、私は「サライ」を選ぶ。単純に、歌えそうだから。

24時間テレビで何度も流れていた、耳に残る有名な曲。

テレビっ子だった小学生の頃に観ていた。今でもCMで流れてくるメロディ。

歌が下手でも何とかなる、そんな処世術としての「サライ」だったけど

35歳になって歌ったとき、はじめて歌詞が沁みこんだ。

不安のない幼少期

県外に出た大学時代

地元に戻り、また出て、戻っていない今

歌詞の中で「愛の故郷」と歌われる…

我々の年代の多くは、2世代住居暮らしの恩恵を受けて育った。

しかしこれからは核家族に切り替わっていく。

「ふるさと」はどうなっていくんだろう…

住宅の見た目について、私はナチュラルカントリーや民家が好き。

しかし本当は、表層的な意匠ではなく、

祖父母や父母と過ごした時間の断片と結びついているのではないか。

原風景として、地方出身の私にはこの曲がそんなふうに重なった。

住宅産業の前提は明確にある。省エネ、空き家対策、物価高騰、賃金停滞、将来不安。

長期優良住宅も、分譲建売住宅も、どちらも意味のある正しい選択肢だと思う。

断熱や構造の構法が成熟し、誰が建てても一定水準が確保させる時代になった。その分、コストも上がっている。

ではこれから、住宅は何を担うのか。

私がつくる住宅を「sat-lai」と呼ぶ。

ケース①

思い出の場所として、大人になってからも帰ってこられる場所。

変わらず在り続ける場所。

ケース②

所有者が変わっても、変わらず立ち続ける場所。

願わくばケース①であってほしい。

しかし、時代の流れは個人の力では制御できない。

だから私は、生活に寄り添うという枠を少し広げ、建物としての骨格を大事にしたい。

建物としての長期的な価値と、街の景観の一部となることを前提に考える。

意匠としての「カントリー」や「民家らしさ」をなぞるのではなく、時間が蓄積されていくための住宅をつくりたい。